5月24日(金)、中津川市坂下高校福祉科の皆さんと回想法研修を行いました。
将来、福祉の道を志す生徒さんに、教科書の上だけでなく体験を通じて学びを深めて欲しいという先生の意向に沿ったものです。
明智回想法センター職員が司会進行し、当館管理者で日本福祉大学教員の来島修志も同席しました。また、回想法スクール修了生の会「げんきかい」の中から、回想法サポーターに登録している高齢者の皆さんも、ボランティアとして駆けつけてくださいました。
まずは3つのグループに分かれて館内を見学し、各グループ1つずつ使い方が分からない道具や興味のある道具を選んで来ていただきました。
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こちらが選ばれた品です。
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まずは黒電話。ダイヤルがありませんね。どうやって使うと思いますか?
生徒さんの予想では「受話器を取って、横についている取っ手を回すとかかる。」、若い先生の予想では「ダイヤルが無く、1件しか登録できないので何軒もかけたい場合は何台も必要?」といった声がありました。
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さっそく回想法サポーターの方に尋ねると「このままでは使えません。取っ手を回して充電するんです。」と教えてくださいました。そして、電報電話局につないで、電話交換手の女性に言って相手に繋いでもらったそうです。
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別の方は、当時の電話交換手は若い女性が多く「今のスチュワーデスと同じくらい花形だったんだよ。」と語られました。
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こちらはいかがでしょうか。何となく予想がつきますか?
これは「天秤ばかり」と言って、商売で使われていた秤です。
回想法サポーターの方の家では農業に使っていたそうです。
お父さんが秤に麦の穂を乗せて、一つの穂にどれくらいお米が付いているか量っていたとのこと。「触ると叱られた。そのくらい大事なものだったんだね~。」と話してくださいました。
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これは何でしょう。
生徒さんの予想では「まったく分からない。」、先生は「ケータイストラップ?」とおっしゃっていました。
正解は、着物の羽織をしばるための紐です。二つセットで羽織に付いている輪に引っ掛けてしばりつけ、両方を結んで使ったそうです。
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いろいろな柄があり、付け替えておしゃれを楽しんだとのこと。
これには、そばでお話を伺っていた来島も「和服でおしゃれを楽しんだ昔の女性は粋でしたね~。」と関心してしまいました。
これは女性用ですが、男性用はもっと大きくてしっかりしており、紐が縦向きになっているそうです。
話し終わった後、来島が生徒の皆さんに「みんな、高齢者の皆さんが伝えたいことがいっぱいあるって分かったかい?」と尋ねると、うんうんと頷いてくださいました。高齢者の皆さんと生徒の皆さんがお互いの時代の差を感じ合い、場の雰囲気が柔らかくなって自然に心の距離が近づいたと感じました。(世代間交流による相互理解)
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また、それ以外にも回想法サポーターの方が昔満州で体験したことをお話ししてくださり、「なぜ最近の事件であんなにも人が殺されるか分かりますか?それは動かないからです。女子生徒の皆さん、いきなり後ろから襲われたらどうする?そういう時は、相手の足の甲を踏めば痛くて手を離す。それに足が痛いから追って来れない。」と護身術を教えてくださいました。
聞いていた男子生徒さんは、自分の足を見ながら(痛そうだな~)という顔で聞いていました。
こういったお話は、この平和な現代ではまず聞けません。
みんな笑って聞いていましたが、様々な事件が起こる昨今、人事では無いのではないでしょうか。
後から生徒さんのアンケートを見たところ「昔のことを知れてよかった。」「満州のお話が印象に残った。」というご意見が大半でした。
このブログを読んで、皆さんはどういった感想を持たれますか。
回想法をやった意義をどのように感じますか。
少しでも皆さんが回想法に興味を持ってくだされば幸いです。
写真と文 林奈央子
※シルバー総合研究所は、恵那市明智回想法センターの管理運営を行っています。
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