先日、今年の造園剪定作業が終わりました。明智回想法センター正面入り口横に立派な松の木が枝を高く伸ばし、シンボルツリーとして立っています。その下には大きな石がどっしりと構え来られる方達を出迎えています。
この松は、江戸時代の後期、明知城の城主遠山氏に仕える村上家・御家老のお付きの武士中村弥太郎義和(なかむらやたろうよしかず)の屋敷が明智町の中心地にあり、広大な庭園を有していた。その家のお孫さんにあたる方(当時4歳)の話によると、小高い丘を配し池には鯉が泳ぎ(生糸の産地であり糸を取った後の蛹をドチと呼び鯉の餌にしていた)石のアーチ形の橋が架かっていた。松はそのころ細くてひょろひょろしていて若木という感じだったそうです。
現在82歳になられるお孫さんの談によると、中村家には後継ぎがいなくて名古屋に行っていた次男の子供が後を継ぎましたが、体が弱くお嫁さんももらえず、生活が困窮してくると家財道具から庭の松・桜・花桃・泰山木・つつじ・庭石・土地に至るまで売り払ってしまったとか。現在ここにある古木・庭石に至るまでその一部が中村家からきたものでした。
すでに朽ち果ててなくなってしまった木もありますが、回想法センターになってから造園業の方が20年もの間毎年春先に剪定をしてくださり、現在の姿になっています。松は、春に新芽が出る前に古い葉を取り除かなければ葉の元に光が届かなくて下葉が枯れてしまい、茶色く見栄えが悪くなります。古来から松は祝賀の時に用いられ葉が常に緑を保ちめでたいものとみなされていて、これを保つためには毎年剪定が必要となります。明智回想法センターに訪れる方が最初に目にする松であり、庭全体の格をあげる大切な松です。四季折々の表情を変えるこの庭には多くのカメラマンが訪れます。
また、春1番に咲き出す梅の木は邸内に6本20年前の物からもっと古い物までまだまだ咲いて良い香りを漂わせています。また、薬膳の世界では、少し開きかけた花びらをてんさい糖で煮た梅シロップはストレス緩和にとても良いと薬膳料理の先生にお聞きしました。
写真と文 吉田あけみ